“ボタンダウンシャツが基本”からの軌跡
穂積和夫さんが、ブログで政府要人のクールビズ・スタイルをこき下ろしている。同感だ。穂積さんとお会いすると、よくその話になる。
オバマ大統領が、いつもスーツにボタンダウンシャツ&ネクタイで記者会見に臨んでいる姿を見るにつけ、彼我の洋服文化の歴史と成熟度の違いを痛感させられる。VAN倒産の数年後、石津謙介さんは、流行について話していた時、こんなことをおっしゃっていた。
「アイビーは本来、若い人の間で流行になるようなスタイルじゃないんだよな。ただ、若い人たちが歓迎してくれて、これでアイビー・リーグの精神や洋服の基本が少しは定着するだろうなあ、と思ったけどね。過去を陳腐化するのが流行だけど、なんでも陳腐化するのはよくないねえ」。
60sFACTORYの企画は、きちんとしたボタンダウンシャツを作る、というところから始めた。
穂積さんにボタンダウンシャツのイラストを描いていただいた。谷さんに、こだわりのディテールに関してアドバイスをいただいた。ディテールの積み重ねから全体は出来上がっていかないが、全体はディテールから容易に崩れてしまうからだ。
腕の確かな工場にお願いしたいと思った。魅力的な写真、優れたグラフィックデザインのポスターなどが、腕のよくない印刷を経たためにゴミになってしまうことはよくあることだからだ。
くろすさんの「ボタンダウンシャツらしい素材と言えばオックスだよ。ブロードは、レギュラーカラーが似合う素材じゃないか」というご意見に、なるほど!と得心し、素材はオックスだけにした。
すると、谷さんが「アメリカン・オックスってVANが勝手に名付けたオリジナル素材があるよ。うん。あるはずだ」とおっしゃったので、探した。
工場は、最初は思い通りには行かなかったが、翌年、ウィンスロップさんに引き受けていただけることになった。うれしかった。
出来上がってきたボタンダウンシャツの姿に、頬がゆるんだ。当たり前のようなシンプルなものをきちんと作ることに、なぜこんなに苦労したのだろう、と思った。
こうして最初の壁を越え、次へ、次へと、徐々に進んでいる60sFACTORY。マドラスのサマージャケットに腕を通した時は、小躍りしてしまったのでした。
60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)
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